文フリに出た動機:何でもいいから本にしてみたかったし、文学フリマに出店してみたかった
文フリに出た動機ですが、単刀直入にいうと、本を作って売ることにあこがれを抱いていたから、です。
文フリの存在は学生時代から知っていたのですが、当時は哲学評論系の批評誌を売るところ、というイメージが強かったので、なかなか現地に行って参加するということは気後れしてしまい、遠巻きに見ているだけでした。
友人たちがサークル出店して、本を売っているのをみて、「いずれは、わたしも......」という気持ちは抱いていたんですよ?
でも、自分が作るものに自信がなかったんです。「こんなわたしが作ったものを読んでくれる人がいるのかな」って。
そこから紆余曲折あり、病気になってから、自分の人生について立ち止まって振り返ることが多くなり、人生のバケットリストを作るようになりました。
そして、自分には無理かもしれないと思っていたことを1つずつチャレンジするようになりました。文フリに参加して、こうして日記本を出したのも、そのチャレンジのひとつ!です。
ちなみに今回販売した日記の原稿は、月日会に投稿していたものです。
自分で書き溜めるのは途中で心が折れて挫折していたと思うので、月日会に入って原稿のストックがあったのはかなり助かりました。
自分で組版も表紙も作る気なかったけど
IndesignもIllustratorも齧った程度の知識しかなかったので、編集も表紙もデザイナーさんにお願いするつもりで余裕ぶっこいてました。ゆとりを持ってました。
ルセラフィムのライブに行った後、コロナに罹ったりして私生活が滅茶苦茶になっているタイミングで、お願いするつもりだったデザイナーさんに納期の関係で頼めないことがわかり、慌てふためきました。
え、これ全部自分でやるの....? と冷や汗が頬をつたう!
必死で「同人誌 制作」などとグーグル先生に聞きまくりました。
インターネット、探せばなんでも情報出てくるすごい!
とにかく編集が大変だった
この記事を参考にして本の編集作業を進めました。
本当にナツメさんの記事が無ければ今回の日記本は出ませんでした、マジで。
感謝してもしきれません。
ナツメさんの記事通りに組版をし、表紙を作りました。
とにかく縦式とCanvaは神。
みんな、この二つのサービスを使えばとりあえず作れますよ、本。
私の場合、Canvaは課金して有料会員になりました。
表紙、挿絵、奥付け、扉はもちろん、名刺やフリーペーパーのデザインもCanvaを使って作成したので元はほぼ取れたと思います。
無料でも十分使えるけど、有料の方が使える素材が多いのでこだわりたい方は
有料を勧めます。
挿絵はprocreateを使いちょこちょこ書きました。
印刷はしまや出版さんの文学フリマフェアを利用
初心者に優しいという評判のしまや出版さんに印刷をお願いしました。
正直右も左も分からないので、とにかくユーザーフレンドリー、ホームページが親切、なんとかなりそう感(これが一番大事)で選びました。
大体同じことしか言ってないというツッコミはスルー。
しまや出版さんには文学フリマフェアがあるというのも選んだ主な理由です。
表紙もセミオーダー・フルオーダーで作ってくれるサービスがあるので、「さいあく、表紙ができなかったらお願いできるな」と思っていました。
表紙本文は白黒印刷と決めていたので文芸オンデセット一択でした。
個人的には文学フリマ用のフェアが助かりました。
早めに入稿すれば、ポスターとしおり、見本誌をもらえます。
設営に対するこだわりがなかったので、ここでいただいたポスターを当日飾ればいいかな、と考えていました。
私は、
表紙;色上質紙 最厚紙
本文;クリームキンマリ(小説用紙72.5kg)
遊び紙;シープスキン80kg
で作りました。
憧れの遊び紙が挿入できたので嬉しかったです。
ちなみに入稿形式は全てpdfです。pdf最高!
入稿、名刺作成、フリーペーパー作成で燃え尽きて、SNSで宣伝できず
無料の頒布物の制作が終わったら、精力的にSNSで宣伝するつもりだったのですが、9月から体調を崩していたのもあり、SNSで精力的に告知できずじまいでした。
本当はもっと作っている様子なども載せられたらよかったんですが。
ここは一つ反省点です。
人がたくさん集まっているブースはSNSも積極的に活用している印象がありましたね。ま、そりゃそうか。
当日、設営で力尽きた
当日朝は糖分をとりましょう。プロテインを摂りましょう。
設営の段階で力尽きてヘロヘロになったわたしからのアドバイスです。
東京モノレールに乗る段階で人が多くて軽くパニックになりました。今年で一番人流を感じたかもしれない。人混みが苦手なので、あわあわしつつブースに到着。
両隣の方が設営をほぼ終えていて焦っていたのですが、お手伝いできてくれた配偶者がテキパキ設営準備をしてくれたおかげでなんとかなりました。
一人で不安な人はイベントに慣れているお手伝いさんを呼んでもいいかもしれません。その際は椅子を追加しておくんだゾ★
設営に役に立ったものナンバーワンはIKEAの額縁。お品書きを入れてました。
A4サイズを買ってお品書きを入れるとぴったしでした。
作ってよかった頒布物
これは断然フリーペーパーと名刺ですね。
フリーペーパーには日記本のサンプルを載せることで、軽く中身がわかるようにしました。裏面は落書きです。
日記本って中身がわからないとなかなか購買まで結びつかないと思うのですが、こうして簡単にでも日記の文体やどういう内容が書いてあるのか、中身がわかると立ち読みもしやすいと思うので、フリーペーパーはバンバン配りました。
名刺を作ったのは完全に趣味です。
印刷も自分の好みの角丸印刷にしました。
(角丸加工代の方が名刺本体の印刷代より高かった...)
フリーペーパーと名刺の印刷は、単価が安い〜!入稿が簡単〜!なグラフィック印刷さんにお願いしました。
スマートチェックという入稿スタイルなんですが、人とコミュニケーションしなくて済むのでとても良いです。 しまや出版さんに日記本の入稿をお願いし、後日電話で原稿をチェックしていただき大変ありがたかったのですが、自分のミスばかりの本文をチェックしてもらうのが心苦しかったので、グラフィック印刷さんのAIチェッカーは気楽でした。
ブースに立ち寄ってくれた人とお話しするのが楽しい!新たな気づきも。
いざお客さんが入り始めると、手に汗握る、緊張が走り始めるっ!
「ブースに人が来なかったらどうする...!?」という切実な感情ッ!
実際は杞憂に終わり、予定していた部数を超え捌ききれたので、初めての出店としては大成功だったと思います。(自分には甘く評価をつけていくスタイルです)
出店の醍醐味ですが、ブースに立ち寄ってくれたお客さんとお話しできること! わたしはほぼほぼ自分の推しの話をしていました.....日記本の内容と関係ないやーん。 お客さんと話す中で、「同じ悩みを抱えている人もいるんだな」「こういう話は求められているのかもしれないな」という気づきも生まれて、もう楽しい楽しい!
両隣のブースの方とも挨拶ができて、お互いの本の話をしたり、思わぬ共通点を見つけたりで、心温まるやさしい時間がそこには流れていました。
「適当なアウトプット」としての日記本
そもそもこの日記本を作り始めた根底には坂口恭平さんが自著の中で繰り返し発言している「適当なアウトプット」という考えがあります。
「それまでいろんなことに興味を持ってきてやってきたけど、急に興味がなくなったということ、よくありますよね。それで自分が好奇心のなくなったつまらない人になってしまったなんて焦る人がいますけど、つまり、それは私がそうだったからよくわかるのですが、この時は何度も言うようにアウトプットの時期に来てます。(……中略……)
インプットってみなさん適当にやるじゃないですか。教科書通りにやると、面白くないし、やる気にもならないのは、皆さんも経験でよくわかっていると思います。英単語とか覚えよう、インプットしようと思ってもやる気ないのに、映画は見るわ、音楽を聴くわ、服も買うし、本も読むじゃないですか?見境なく、適当に何でも雑色するじゃないですか?でもアウトプットの時は急に改まる。アウトプットも今みなさんがやっているような適当なインプット、乱雑なインプットのようにできると楽になるような気がしませんか?私が普段心がけている方法はこれです。適当なアウトプット。さっとやる。思いついた瞬間にそのままやる。改まらない。偉そうにしない。教科書通りにしない。ルールを無視する。ほっとく。適当に。真似したりして、さっと形にする。深刻に考えない。ただの娯楽としてやる。人に見せる事は一切考えない。ただの楽しみとしてやる。」(坂口恭平,『自分の薬を作る』,晶文社,2020年,p.206)
月日会に入会した2022年ごろは、しんどいことが続いて、体調も不安だし、夜も眠れないし、ということで鬱々としていたんです。自分の生活にも関心が持てなくなって、ぼんやりとしたまま1日がすぎていく......。
そんな時に坂口恭平さんの『自分の薬をつくる』を読んで、「何か作らなきゃ!」と思い立って始めたのが日記を書くことでした。
日記本のあとがきにも書いているのですが、誰が読んでいるかわからない日記を綴っていくうちに、自分の生活の軽さに疲れてしまって途中で月日会を断念しました。
メンタル状態があまり良くなかったんですね。当時は。ははは。
本になったことで、頭の中で考えていることが現実になる感動と驚きがそこにあった
月日会を脱退して、仕事を探したり、他の活動に精を出している間に、放置しっぱなしの自分の原稿のことが気に掛かりました。
「これ、いつか本にしたい」と思っていたよなって。
そして一念発起して、前述のように本作りを始めます。
で、ま、紆余曲折あり、無事に入稿も終わり、見本誌が家に届きました。
ワクワクしながら封を切ると、そこに自分の書いた日記が、しっかりと印刷されて日記「本」になっているではありませんか。
自分が思い描いていたように、表紙が印刷され、遊び紙が挿入され、文字化けすることなく本文が印刷されている....!!
自分の日記が、質量を持った一冊の本という形になって自分の目の前に現れた時、 形容しがたい新鮮な感動と驚きを味わうことになりました。 インターネットの画面をひたすら見つめてちくちく作業していたものがこうして手に取れる印刷物になるという体験を初めてしたので、なんだか自分が誇らしいような嬉しいような気持ちになったわけですね。
劇団ひとりさんが映像作品作りに関して、同じ事務所の盟友、ビビる大木さんと語った動画があります。*1
ビビる大木 こんばんみちゃんねる 【祝開設】劇団ひとり めちゃイケ名物Pと衝突した熱い過去を初告白【ビビる大木】#1 の回より
ここで劇団ひとりさんは自身の映画制作について、 「自分が頭の中に思い描いている物語が、現実にできてくんだからさ、それはもう、快感だよね!」(本編12:33ごろ)と語っています。
日記が本になって直接手に取れる形になった時、私はその対談のことを思い出したのです。
自分が頭で思い描いていた空想のイメージが、こうして現実の、目に見える物(ブツ)になっているという衝撃たるや。
大人になってから、少しずつわかってきたことがあって。
それは頭の中で考えていることを全て理想通りに叶えるのは難しいのかもしれない、ってことです。
入りたかった大学、夢見たキャンパスライフ、決めたかった就職先......現時点でわたしは叶えることができなかったんですね。
そりゃー、多少は努力しましたよ? でも、理想は理想のまま。現実は無慈悲でした。
そして学生時代に大病にかかり卒業するまでに8年かかりました。つらい、つらい。
でも、こうして今、一冊の本を作れたこと。
想像していたとおりに本を作れたこと。
「頭の中に思い描いているものを、現実のものにできた」こと。
自信をなくしていたわたしにとって、四苦八苦しながらもこうして1冊の本を作ることができた、というのは自分自身をエンパワメントする大きい体験でした。
日記本を読んでもらえたことで、自分自身を肯定されているような気持ちになった
そしてまた、自分の日記本を目の前の人に買ってもらえることで、自分自身の人生を肯定されているかのような、大きな喜びがありました。 なんかちょっと大袈裟に聞こえるかも? でも、自分に自信をなくして「こんなもんか」とついつい自分自身で軽んじていたわたしの毎日に、ちょっと明かりがついたような気がしたんです。
みんなも「適当なアウトプット」でいいから本作ってみようよ(完)
はい、ということで、当初の予定よりかなり長くなってしまったんですけど。 「適当なアウトプット」でいいから本を作ってみよう!というお話しです。なはは。
今回販売した日記本のあとがきに「自分のこの悶々とした日々がこうして本という形になって、わたしをどこかに連れていくだろう。」なんてカッコつけて書いてますけど。 書いたときはこんなふうに文フリに出店することで色々な体験をできるとは思っていなかったんですけど。
でも、
ものをつくるって自分を想像していないところへ連れていってくれる、すごいパワーがありました。
こりゃ、病みつきになっちゃうね!
あなたも本、作ってみませんか?
最後に、 文学フリマ、最高!!日記本、最高!!
告知
日記祭、でます!
今回頒布した日記本をごく少数ですが委託販売させていただきます。 『朝に追いつくまで』/ずっとVACATIONです
下北沢でわたしと握手!(当日はどこかにいるかもしれません。)